陶芸と、星占い、タロットカードを、職業にしています。体験をもとにした、心、魂の世界についてのエッセイです。


by fufu6k
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東日本大震災

                     占いのホームページ SPACE・和


 旧い友人で、もと自衛官のT君は、大震災の直後、仕事で東北へ行った。彼は退官したあと、ハイヤーの運転手になった。被災地に医者や看護士を連れて行く仕事が、彼の勤める会社に依頼され、同僚が尻込みする中、彼が名乗りを上げた。自衛官時代の経験と、つちかった心構えが、彼を支えていた。

「一度、被災地を見たほうがいい」
 彼は私に言った。テレビで見るのとは、大違いだ。どんなにすさまじく、どんなに恐ろしいことが起こったか、現場に立ってみると、体に突き刺さるように、いろいろなものを感じる。日本に、どんなことが起きたのか、それは実際に行ってみないとわからない。
 彼は力説した。

「仕事でも、ボランティアでもなく、ただ見学に行くわけにはいかないでしょ」
 野次馬になってはいけない、と、私は言った。
「俺も初め、そう思った。でも、行ってみて、わかった。これを、見なけりゃいけないって」
 彼は何度もそう言った。

 あの日、壊滅した町や村の映像を眺めて、日本中の人が、呆然とした。テレビ画面をみつめながら、実際はどうなんだろう、と思ったのは、私だけではないと思う。延々と映し出される映像は、つらく、恐ろしかったが、あくまでも映像だ。何が起こったか、体感できないもどかしさを感じた。T君が言おうとしていることは、よくわかる。

 肌でわかっていないと、事の重大さが心に染み透って来ず、時がたつにつれて、東北のことは他人事になってしまう。あのときは、これは日本人全体の問題だと思ったのに、その切迫感が薄れている。これは、のんきに忘れてしまってはならないことなのだ。T君は、それを訴えていた。

 私の身近な人の家族や友人も、被災している。津波で会社が流された人。迫り来る津波から、からくも逃げおおせた人。たまたま用事で東京に来ていたときに、原発事故が起き、家へ帰れなくなってしまった人。

 震災から三日ほどたった頃、富士山麓の自宅から、東京の実家へ行った。夜、お風呂のあとで、髪にドライヤーをかけていたとき、激しい揺れが来た。二階にいた私は、階段を駆け下り、茶の間のテレビをつけた。震源は静岡県。私が住んでいる、山梨県富士吉田市の映像も映り、震度5という表示が出ていた。入浴中だった叔母に声をかけ、地震で家の中がどうなったか、中央道の通行止めは、明日、解除されるだろうか、仕事先に連絡しようかなどと気を揉んでいると、メールの着信音が何度か鳴り、電話もかかってきた。頭の片隅で、ここ数日の地震が富士山に影響を与えないだろうかと、考えていた。

 その日のお昼に、テレビで総理大臣が、国民に向けて、福島の原子力発電所で重大な事故が発生したことを告げた。「みなさん、冷静に聞いてください」と言う菅総理の言葉を聞いて、地の底から湧き上がってくるような恐怖感に捉われてしまった。

 3月11日とそのあとの数日間、それまでの人生では味わったことのない思い、文字通り、足元の地面が揺らぎ、なくてはならない基本の安全が失われてしまった恐ろしさを、感じ続けていた。テレビから日常の番組とコマーシャルが消え、災害の報道だけになったことも、危機感を煽った。

 心の芯が凍りつくような思いで、壊滅した地域の映像を眺めながら、“神”が敵に思えた。大自然の力は、多くの人の人生を、根こそぎ奪った。これからもまだ、奪い続けるのだろう。自然は敵だ。
 それから、こうも思った。自然を、神を、敵に回したとき、人間は、人間同士でいがみ合うことをやめ、心をひとつにできるのだと。少なくとも、あの数日間は、日本人の心はひとつになっていたと思う。
 
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by fufu6k | 2012-02-20 01:00